カテゴリー「住まい・インテリア」の6件の記事

2009年5月 6日 (水)

スピーカー・ベースの製作

SpeakerBase リビングのテレビを新しくした――わが家もついにデジタルに対応した――と同時に、テレビ台も新調した。

このテレビ台、数ヶ月かけて家具屋をまわってみたものの、なかなか好みにあうものを見つけられず、結局インターネットでオーダに応じてくれる店を見つけて、そこにお願いすることになった。2月に発注して、届いたのは4月初め(そのあいだ、以前書いたようにとても忙しかったので、「待った」という感覚もほとんどないままに届いた)。作ってもらったテレビ台は、形はよく見かける横幅の広いボード型のものだが、突き板の色や天板の材質、センタースピーカーを置くスペース、収納力といった条件を気にして選んでいたら、オーダメイドになってしまったという感じだった。


横幅を広くしたのは、見た目と収納力を考えてのことだが、その結果いままでスタンドに乗せていたブックシェルフ型のスピーカー、B&W の CDM1SE の場所に悩むことになった。テレビ台の前に出すということも充分考えられたのだが、家族の生活の便などを考えて、テレビ台の両翼に乗せることにした。それで、天板の材質を変えてもらった。標準でハニカムコアのフラッシュ構造のものを使用しているところを、MDFに変えてもらったのだ。本当はウォールナットの集成材にしたかったのだけれど、かなり価格が上がってしまうので断念し、MDF+突き板にして重量をかせぎ、スピーカーを置く土台になるようにした。

ただ、その上にそのまま CDM1SE を置くわけにはいかない。見た目がみっともないし(笑)、高さも足らない。それでスピーカー・ベースを作ることにした。

§

モノは冒頭の写真で見ていただいたとおり、簡単なものだ。

大切なポイントのひとつとなる木材には、サザンイエローパインを使った。以前 ALR/Jordan の Note 7 のスピーカー・ベースに使っていたのも、このサザンイエローパインだった。硬度・強度が高く、木製ジェットコースターの構造材にも使用されている。重量もそこそこあり、それでいて安い。どこにでも売っているというほどメジャーではないけれど、ホームセンターでも探せばウッドデッキ用として扱っているところがある。

ぼくもホームセンターでツーバイフォー材のサイズで売られているものを購入した。約2mで700円くらいだった。室内の家具用とか工作用とかそういう扱いではないので、仕上げは決してきれいではない。たいていは節が入っているし、反ったり割れの入っているものも多い。節は見かたによってはそれを楽しむこともできるけれど、反りや割れを修正するとなると大変なので、まずは木を選ぶところが大切だ。

材料を選んだらそれをカットしてもらう。いつも思うが、ホームセンターでのパネルソーによるカットはちょっとリスキーだ。切断面が粗いし、焦げてしまうことも多々ある。またセットのしかたによって寸法の誤差も出る。これは店員さんのモチベーションによるところが大きい。ただ、どうであれ、こういう材料は自分で切るよりはパネルソーで切ってもらったほうが直角を出せるし、寸法面でも今回は誤差はあまり問題にならないので、ホームセンターで切ってもらった――ら、いちばん大切な中央の梁になる部材だけが、なぜか斜めに切れていた(爆)。これは泣けた。いったいどうしたらパネルソーで斜めに切れてしまうのかよくわからないのだが、帰って組み合わせてみると、どう見ても切り口が斜めになっている。まあ、自分の労を惜しんで他人にお願いしたのだからしかたがない、と思いつつ、これはヤスリで修正した。それだけで半日かかった。カンナがけという方法ももちろんあるけれど、ぼくの技術では木口のカンナがけはむずかしい。

ちなみに、ぼくのような素人がきちんと精度良く切ってもらおうと思ったら、東急ハンズがお勧めだ。決して安くはないけれど、精度、品質とも次元がちがう。以前オーディオラックを作ったときには、東急ハンズでお願いして、その仕上がりには感動した。

§

l-30塗装のために、目の細かいヤスリで全面を磨く。今回は、紙/布ヤスリだけでなく、NTカッターのドレッサー(中目)を使った。目詰まりせず、力も入れやすい。価格が高いのでコストパフォーマンスとしてどうか、というのは微妙だが、紙/布ヤスリをつぎつぎ使い捨てていくことに比べると、手間も精神的にも楽だし、途中で足らなくなって走らなければならないようなこともない。このドレッサーは中目なので、だいたいこれで表面を整えたあとは、#240~#320くらいの布ヤスリで仕上げる。モノによってはさらに#400とかそれ以上のものも使用する。今回はスピーカー・ベースなので、それほど表面を滑らかにする必要もなかった。

ヤスリがけはその後の仕上げを左右する大切な工程だが、粉まみれになるし、力もいるし、時間のかかるつらい工程でもある。いつも「つぎこそは電動サンダーを買おう」と思う(でも買ってない。次こそは...)。

今回のスピーカー・ベースは小さいものなので、塗装の前に組み上げを行った。全工程中、もっとも簡単な作業だ。現物の寸法を確認して、中心部の梁の位置を決め、水平と直角ができるようにテーブルに簡単な治具を配置して、木工用ボンドで止める。そのままでも実使用上は問題ない強度で接着できるのだが、今回はさらに梁に対して両側から6cmの長い木ネジを入れて補強した。これだけの長さの木ネジになると、さすがに力がいるし、材料の割れも心配なので、あらかじめドリルで下穴をあけておいた。

§

最後に、木工でもっとも気を遣う塗装作業となる。過去数えきれないほどの失敗を経て、ぼくの塗装方法はもうパターン化している。オイルステインで着色し、そのあとでクリアラッカーを塗るのだ。この方法だと手軽なわりに、塗りムラなどの失敗が少ない。

事前に、カットであまった端材に塗装して色味を見た。サザンイエローパインはその名のとおり黄味が強く、またあまり吸い込みもよくないので、薄めの発色となる。マホガニーも考えていたのだが赤みが強く出すぎることもあり、結局テレビ台と同系色のウォールナットにした。オイルステインはホームセンターで簡単に手に入る和信ペイントのものを使っている。

オイルステインの塗布は簡単だ。ハケで均一に塗布したあと、ウェスで塗りこむようにしてふき取ればいい。ただしムラが出ないわけではなく、調子に乗って適当にやっていると、濃淡が出てしまうので注意は必要だ。その日はステインの塗布だけにして、ひと晩乾燥させた。

オイルステインは着色剤なので、それだけでは光沢は出ない。出なくてもいい場合はそれで完成だ。それだけで終わらせたものも過去にはいくつかあるけれど、ぼくの場合はすこし光沢感が欲しいので、上からクリアラッカーを塗る。

翌朝そのクリアラッカーの塗布を行った。これも和信の製品で、2倍程度に薄めて、3回塗りを行った。強い光沢感を求めているわけではないので、このくらいがちょうどいい。以前はサンディングシーラーを使用したこともあったけれど、そうすると本当にテカテカになってしまって、結局シーラーは一度しか使用していない。

クリア・ラッカーのいいところは、乾燥が速くて作業効率がいいことだ。これはぼくのようなせっかちな人間にはとてもありがたい。2回目と3回目の塗装のあいだには、平滑化のため簡単に#400の布ヤスリをかけておいた。

§

結局、2日程度でスピーカー・ベースは完成した。材料の切り出しがもうすこし正確にできていたら、1日半で終わっていたと思う。

設置してみた感想は――ガタツキもなくスピーカーの下に収まった。見た目も実際も安定している(よかった)。収まってしまえば、そう存在を主張することもなく溶け込んでいる。音は?――まあふつうだ(笑)。

 

| | コメント (0)

2008年12月30日 (火)

1週間だけの引っ越しと電源200V化

200V 秋の運動会から今日まで、とても忙しかった。去年は去年で思うところがあり、一念奮起して担当者の仕事に戻って腕が痛くなるほどコーディングをして、要するに仕事で忙しかったのだが、今年はプライヴェートな生活が忙しかった。

§

ことの発端は、そろそろ築10年になろうかというウチのマンションで、いまさらながら不具合が発見されたことにある。

いったい誰がどうやって発見したのかいまもってよくわからないのだが、外壁と内壁(石膏ボード)のあいだの吹きつけ発泡式の断熱材が規定の厚さに達していなかったのだという。調べてもらったらわが家もそれに該当していた。20ミリのはずが17ミリだった、とかいうレベルで、たいして断熱性能は変わらないといいつつも、不具合にはちがいないので、無償でやり直すという。「やり直す」と簡単に言っても、約1週間の工事期間中は家を空ける必要があり、家具は業者が移動するものの、その中身は住人が空にしておかなければならない。そのあいだの住居は、業者が借り上げたマンション内の空き住居を使用することになるので、その住居に生活に必要なモノも自分で移動させなければならない。


うちのマンションは数棟から成り、大規模マンションといえる規模だと思うが、ほとんどの住居がこの不具合に該当したということもあり、工事は1年以上かけて行われている。工事のあと業者が無償で壁紙をすべて新しいものに張り替えるとあって、マンション全体がにわか「壁紙バブル」の様相を呈している。10年ほど経過して、そろそろくたびれてきたかも、というころになって、無償で壁紙を新しくしてくれるというのだから、それは考えかたによっては願ってもない話だ。

わが家はといえば、このあいだ横浜からもどって、数十万円かけて内装をやり直したばかり(爆)。いまさら内装が新しくなったって、べつにそううれしいわけでもない。数ミリという断熱材の差と、「家じゅうのものをすべて箱詰めして1週間だけ引っ越す」という途方もない手間を天秤にかけて、くよくよと悩んだ。ぼくは――もちろん――咄嗟に、B&Wの802Dの移動のことを心配した。そしてうんざりする量の本とCD。それを収納する大きな書棚。天井のQRDモドキ。水槽....。

結局、半年以上前に工事を申し込んで、この年末にようやく順番が巡ってきた。

§

工事と引っ越しそのものは、予想どおり大変だった(笑)。年末ということで、引っ越し以外にもさまざまなことが重なったということもある。あと十年か百年くらいしたら笑って話せるかもしれないけれど、いまはまだそのインパクトが残っていて、とてもそんな気になれない。夜中の0時すぎ、水槽とその配管やバケツを台車に乗せて移動させる姿は、異様すぎて誰にも見られたくないものだった。

いちばん心配した、スパイクつきで片側80kgのスピーカー B&W 802Dは、なんとか人も家も自分自身も傷つけることなく、べつの部屋に移動して、1週間後にもどってきた。持ちあげて扉をくぐろうとするときに、うっかりダイヤモンド製の頭(笑)を枠にぶつけそうになって息を呑んだりはした。GOLDMUND のアンプとCHORDのDAC64は、つまらない事故を避けるために、あらかじめ自分で元箱に詰めておいた。

§

さて、じつはこの機に乗じて、オーディオ用の電源を200Vにした。まえに、オーディオ用には専用のブレーカをつけている、という話をした。だから、べつにやろうと思えばいつでもやれる話だったのだが、工事のためスピーカーを移動させたすきに、壁コンセントを100Vのものから200Vに交換しやすくなったこと、それから、たまたま機会があってGOLDMUND MIMESIS 18.4MEの200V対応への変更方法を教えてもらったこと、などが重なって、この機会にやることにしたのだ。

ちなみに、おなじGOLDMUNDのプリアンプMIMESIS 27MEは、背面のスイッチで対応電圧を簡単に切り替えられるようになっている。それと、CHORDのDAC64 Mk2はCHORDの誇るスイッチング電源で、100Vから240Vまで自動追従だ。だから、ぼくの200V環境は、トランスで100Vや115Vに降圧して使うのではなく、プリアンプ、パワーアンプ、DACの3大機器に直接入力して使うことになる。

200Vという電圧の意味は、正直微妙だ。ただ、100Vという電圧で使用するよりも、200Vでより少ない電流で使用するほうが力感が得られやすいような気がすること、それから、GOLDMUNDの本国のマニュアルではなぜか、110V設定の場合は 105Vから120V、220V設定の場合は 200Vから240V、で使用するようにと書かれていて、100Vが含まれていないことなどから、100V駆動よりは200V駆動のほうが良いような気がしたのだ。200V化したいという気持ちは強いものの、動機を筋の通った理由で説明しようとすれば、所詮そんな程度の話になってしまう(笑)。前回電源トランスのときにも書いたように、そもそも電源ケーブルをかえて音がかわる、という基本中の基本の話からほとんどすべて、理屈を問えば不思議としか言いようのない話ばかりだから、たいしてコストのかからない 200V化も、その一環として楽しめればそれでいい、というふうに考えたほうがよさそうだ。

§

小さい工事でもやってくれる近所の電気屋さんにお願いして、ブレーカーを切り替えてもらった。工事費5千円。事実上出張費だけということのようだ。周囲で壁紙工事が行われているなか、ついでに分電盤もきれいに掃除して、ほかのブレーカーのネジの増し締めをしていってくれた。壁コンセントも、100V対応のPS AUDIOのPOWER PORT――そんなに思い入れのある品物ではない――から、あらかじめ用意しておいた明工社のME2830になった。電源ケーブル側は、おなじ明工社のME7021をプラグとして装着した。とくにプラグについては、もうすこししっかりしたものが欲しかったのだけれど、プラグ形状とメッキの関係から、すぐに手に入りそうなのはこれくらいだった。壁コンとプラグは、いずれもインターネットの電材屋さんから入手した。

10分程度の工事が終わり、電源環境は整ったのだが音は出ない。なぜならぼくの部屋はまだ空っぽなのだ。やがて大きな家具が設置され、802Dももとの場所に収まった。これからの計画はこうだ――家具を据えつけたあと、本やCDをもどすまえに、オーディオ機器の結線と復帰をさきにやって、音出しまでやってしまう。中身のない家具は簡単に動かせるから、場合によってはもうすこしじっくりとセッティングを追い込むこともできるかも。

でもそれは、浅はかな考えだった。

別室にしまってあったアンプを開梱し、さらにはPCも設置した。数時間かけてすべての結線を済ませ、念のためもういちどテスターで電圧設定を確認して、多少緊張しながら電源を入れた。音は出た。それは聴きなれない、残響の強い音だった。

これを読んでおられる貴方と同様、ぼくも聴いた瞬間、なにが起こっているのかすぐに理解できた。空っぽの本棚が響きを増やし、音をぼやけさせているのだ。スピーカーのあいだに空っぽの本棚があると、定位がかなり不明確になってしまう、という当然の事実を、ぼくはこのときはじめて体感した。

この音では、じっくりと追い込むなんて、とても無理な相談だった。結局、その場ではできる範囲での確認と微調整をして、早々に本とCDを運び込むことにした。段ボール箱を積みあげた部屋にいる女房が荷物をとりだし、子供たちにわたす。子供たちは、その部屋とぼくの部屋とのあいだをせっせと往復して荷物を運ぶ。小学生以下だから期待できる献身と熱意。ぼくはそれを受けとって本棚に納める――そんなバケツリレー的作業は休憩含めてさらに数時間かかり、低域の周波数特性を改善してくれる天井のQRDモドキももう一度接着して、復旧したのは次の週末――この週末――のことだった。

§

1週間の引っ越しで、結局、改善できたのは細かい部分だけだった。本棚の側面につけている吸音材をきちんと固定できるようにして、耐震補強をして、以前から気になっていた位置も数cm程度ずらした。絵の位置も壁紙もかえて、すこし気分もかわった。じつのところ、そんな細かい話よりも、家全体として事故や破損、改悪点もなく無事に終わったことの安堵のほうが大きく、改善など望む心境ではなかった。

そんな状況での小さなイベント――200V化の効果はといえば、正直、期待していたほど大きなものではなかった。200V化にあわせて、アイソレーション・トランスをはずしたり、電源ケーブルがかわったり、と、周辺の変化もあったりして、どれがどの効果なのか、というのは一概にはつかみにくい。

Haitink-CSO-Mahler0 ただ劇的な変化がなかったとはいえ、力感とそれに伴う解像度はまちがいなく上がったようだ。マーラーの交響曲第3番、以前紹介したハイティンク指揮シカゴ交響楽団の演奏で聴いてみた。冒頭のファンファーレのあと、静寂のなかで小さくバスドラムの鼓動が響く。このバスドラムの音が、はっきりと明確に聴きとれる。強奏部分でも、以前より余裕で鳴っているように聴こえる。

これがプラシーヴォかどうか、というのは自分ではなかなかわからない。いずれにしても、機器たちは200Vでまあまあ快調に動作しているようだ。これから鳴らしこんでいくにつれ、さらに良くなっていくだろう、という期待は充分に感じさせてくれる。

| | コメント (2)

2008年9月 7日 (日)

B&W 802D と 部屋の対策 (その3)...天井

B&W-MIC 前回、部屋の話をしたのが去年の10月のことだから、すでに1年ちかくがすぎてしまった。そのあいだ、部屋の対策についてはなにもやっていなかったのかといえば、じつはその通りで、いろいろと考えあぐねているだけで、結局ほとんどなにも手をつけていなかった。

スイープ信号を使ってリスニング・ポジションの周波数特性を計測してみると、ぼくの部屋は 85Hzあたりに落ち込み(ディップ)がある。その周波数はちょうど「低域の音」として厚みを感じさせる部分だから、音楽を聴いていて、低域部分が薄くなってしまうという悩みがあった。これは、スピーカーやそのほかの機器が悪いのではなく、定在波の影響だ。定在波については、Nifty の FAV フォーラムの時代から活躍されている HOTEI さんのサイトに詳しい。


リスニング・ポジションでは聴こえにくくなる85Hzの音も、すこし(1mほど)聴く位置をずらしてみると、大きくようすが変わる。あるいは立ったり座ったりしても、聴こえ方が変わる。こうした聴こえ方の変化も、定在波の特徴なのだろうと思う。

ちなみに、周波数特性は下の図のような感じ。上の赤いライン。低域の85Hzあたりでグンと下がっているのがわかる。

Before Skyline

これを軽減しようと、部屋に本棚を入れてみたり(いや、けっして定在波対策のためだけというわけではないのだけれど)前回のようにクローゼットの扉に吸音材をかぶせてみたり、あれこれ対策を試みたものの、いわれてみればすこし良くなったかも? という程度で、顕著な改善は見られなかった。

§

以前の記事にも書いたように、なんとなく天井があやしい、という思いは以前からあった。天井の対策といえばRPG社QRDの Skyline(スカイライン)が定番、ということになるのだが、あの物体を天井に貼りつけるには、それなりに勇気がいる。問題は――美観上の課題、効果への疑問、そして価格、だ。気軽に試そうという気にはなかなかなれない。

そんなおり、ひさしぶりに Yahoo オークションをのぞいてみると、ロビン企画さんがQRDのスカイラインによく似たディフューザーをたくさん安価で出品されていることに気がついた。スカイラインのベースになっているディフューザー理論にどれだけ正確に基いているのかはよくわからないけれど、美観・効果・価格のうち、価格が解決されたとなければ、それだけでハードルはずいぶん低くなる(笑)。それでもしばらくはクヨクヨと悩んだすえに、美観にしても効果にしても、やっぱり試してみなければわからん、ということでこれを購入――落札――した。

天井への取りつけは、両面テープ、接着剤、ピン、クギなどいろいろと検討し、結局3Mのコマンドタブを使うことにした。接着力が強力で、厚みがあり、天井や壁に使われているエンボス状のビニールクロスでも相当の力を発揮する。それでいて「キレイにはがせる」というすぐれものだ。

SkyLine2 ほんとうはディフューザーを天井に仮止めして最適場所をさがす――という追い込みをしなければならないのだが、天井とにらめっこして考えたところで、照明や煙感知器を避け、なるべくスピーカーと視聴位置の一次反射面に設置しようとすれば、おのずと位置は決まってくる。3Mのコマンドタブでえいやっと貼りつけた。

強度的にはなにも問題なし。設置してすでに1週間が経過したいまも、緩んでくる気配はない。まあ、かりに落ちたとしても、発泡スチロールだから、怪我をするようなこともないだろう。

§

はやる心を抑え、試聴してみた――にわかには信じられなかったが、音が明瞭になり低域の量感も改善している。ほんとうに?――自分でも半信半疑のまま、計測してみたところ、つぎのような感じだった。

After Skyline

冒頭で示した対策前のグラフとは、測定した日がだいぶ離れているし、それ故にたとえばマイク・ゲインと入力音量の関係など、細かい条件も微妙に異なっている。電源やケーブルも一部見直している。だから厳密には比較できないけれど、低域の大きなディップは改善されていることはまちがいないようだ。しかも聴感上それを明確に聴きとることができる。

見た目は――本家のQRDの精度がどれくらいのものかはわからないが――ロビン企画のスカイライン型ディフューザーは、角がとれたりしている。また、いかにも発泡スチロールという感じだ。ただ、造形や強度はしっかりしており、すぐこわれそうなヤワな感じではない。天井に貼りつくと、存在感は強く、これまでなるべく過剰な対策は控えてきたのだが、ついにいかにもオーディオルームみたいな感じになってきた(笑)。女房には「ああ、そういうところまで行ってしまったのね」と冷めた声で言われた。

でも、こういう明確な効果があると、さすがに外そうという気にはまったくなれない。どこかでQRDの実物を見ることができて、その仕上がりに差があるようだったら、ひょっとしたら本家のQRDに交換するかもしれないけれど。

この周波数特性をさらに平坦にするにはどうしたらいいか――なんてことを考えはじめるとキリがない。じつは、この効果に気をよくして、ここしばらくはDRC (Digital Room Correction) にハマッていた。ただ、ぼくのスキルの問題か、あるいはべつの原因があるのか、高域がロールオフしたり定位が不明確になったりして、どうもいま以上のよい効果を得ることができなかった。そんなわけで、しばらくはこの環境で使いつづけることになりそうだ。

Annotations :
スイープ信号の生成とFFT解析には、efuさん作成のフリーソフトウェア、 WaveGene と WaveSpectra を使用させていただきました。このふたつのソフトウェアには、ずいぶん以前から定番としてお世話になっています。この場を借りてお礼申し上げます。
efu さんのサイト: http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/

| | コメント (0)

2008年6月30日 (月)

リビングのホームシアターの再始動

CDM1SE 子供たちがすこし大きくなって、気持ちの余裕が出てきたのか、あるいはなにかが目覚めたのか、女房が「リビングで音楽を聴きたい」と言い出した。

ずっと以前――もう10年ちかく前だ――わが家のリビングには、当時まだそれほど一般化していなかった「ホームシアター」があった。市販されて間もないDVDと、プロジェクターと、スクリーンと、5.1ch のサラウンド環境という構成だった。やがて子供が中途半端に大きくなるにつれ、映画の内容や大きな音を怖がるようになり、またそれと同時に家族全体が土日も含めて「いっぱいいっぱい」の生活を送るようになって、映画を観る習慣も自然に遠のいていった。そこに追い討ちをかけるように東京への転勤があり、横浜の家に移るときにプロジェクターは知人に譲ってしまった。


3年間の横浜での生活中、アンプを2回、変えた。でもそれは、ぼくの部屋の2チャンネル再生用のシステム(世間では――すこし恥ずかしい言葉だが――ピュアオーディオという)の話で、リビングはリアスピーカーも設置せず、かろうじてフロントスピーカーだけ結線されていた状態で、それすらもあまり使うことはなかった。

横浜からいまの関西の家にもどって、さらに2年がすぎた。そのあいだに、このブログでもご報告しているように、スピーカーを変えた。それもやはりピュアオーディオ用で、リビングのAV機器はといえば、恥ずかしながらフロントスピーカーすらも結線されておらず、完全に休眠状態になっていた。

それが、先日の女房の「リビングで音楽を聴きたい」のひとことで、再始動することになった。

関西にもどるとき、ピュアオーディオ用の機器をリビングに移して、AV機器と統合しようか、というアイデアもあった。プリアンプMIMESIS 27ME の SSP モード(スルー入力)を使えば、電気的には簡単に統合できそうだった。もちろん、音質の調整という意味ではいろいろと苦労することもあるだろうけど。

リビングに置く場合のいちばんの問題は、大きくなったとはいってもまだ小さい子供たちである(笑)。自分の子供たちだけであればまあまあ信頼しているから問題ないと思ったが、友達が大勢きたりすると、やはり相乗効果でなにが起こるかわからない。ちょっと危ないかも、ということで、オーディオ機器は依然ぼくの部屋にあり、リビングにはホームシアターの残骸が残されていた。

日曜日、1日かけてリビングの機器の全チャンネルの結線をした(と、さらっと書いてみたものの、それは大変な作業だった(爆))。音をだしてみて、すぐに問題が発覚した。ひとつは、これは以前からわかっていたことだが、リモコンが効かない。さらにそのために、画面上でスピーカーのセットアップができない。そして致命的なことに、フロント左チャンネルと、センターチャンネルの音がおかしい。くぐもった音で、大きくなったり小さくなったりする。固唾を呑んで見守っていると、1分ほどで正常音量、音質になる。勝手に音量が大きくなることから、アンプ側の異常だろうということは想像がついた。

選択肢は3つだ。修理するか、買い替えるか、がまんするか。なにも投資がいらないので、しばらくようすを見ることにした――つまりがまんしてみることにした。ところが数日後、女房によるとまたおなじ現象が起こって、勝手に音量が大きくなったという。これはやっぱりまずそうだ。メーカーであるオンキヨーに問い合わせてみると、保証期間は当然とっくにすぎていて、訪問修理だと相当の金額になるので、サービスセンターまで持ってきてほしい、という。

10年前の決して高級とはいえないAVアンプ。修理料金と買い替え費用の両天秤が、沈黙のうちにぼくと女房のそれぞれの脳裏をよぎる。このアンプは長いあいだ持っているから当然愛着はあるけれど、残念ながら溺愛しているというほどではない(そもそも10年前、このアンプの音に満足できないがために、ぼくは別系統でピュアオーディオに走りはじめたのだった)。10年使ったのだから、もうこの種の機器としては天寿をまっとうしたということなのかもね――そういう話になった。つまり、買い替えである。

買い替えとなると、俄然話がややこしくなってくる。

ひとつはアンプの仕様の話。時代はすでに HDMI である。買い替えるのであれば、この HDMI に対応したくなってくるというのが人情というものだ。ところが HDMI はまだ仕様が安定しておらず、世間では HDMI1.2 という一世代前の仕様の製品もあれば、HDMI1.3a という最新仕様に対応したものもある。しかもそれが最終仕様という保証はどこにもなく、今後まだ新しい仕様が登場することは充分に考えられる。また HDMI に対応していても、将来増えるかもしれない機器をある程度視野に入れて入力数・出力数を考える必要がある。

もうひとつ、ネットワーク機能の有無もかなり迷った。IT屋としては、ネットワークにつながると聞くと、どうしてもつなげたくなってしまう。わが家ではDLNA サーバがいくつか(笑)動いているし、最近では  iTunes サーバも稼動している。インターネットラジオもときどき聴く。これらの音楽をアンプから直接再生できれば便利だと考えたのだ。さらに外部に口が開いていれば、ひょっとしたら将来のファームウェア・アップデートという、いいこともあるかもしれない。

ただ、ネットワーク機能があったとして、果たして家族がどれだけ使うのか、というのは正直なところ疑問だった。わが家の場合、リビングにPCがある。PCのデジタル出力をアンプに入力して再生する、というほうが操作として自然かもしれない。また、ネットワーク機能のついているアンプは、おしなべて価格が高い。ネットワーク機能を選ぶということは、つまり中級以上の機種を選ぶということになる。

そしてもちろん、アンプのグレードも迷う要素になる。ピュアオーディオをやっているので、「音が出る」というレベルの製品から、「いい音が出る」という製品、そして最終的には「好みの音が出る」というところまで、メーカによって、あるいはその製品のグレードによって、さまざまであることは充分にわかっている。ぼくがピュアオーディオで使用している機器はわれながら正気の世界とも思えないから比較にはならないけれど、それにしてもAVアンプでそれなりに満足のいく音質を得ようとすると、ある程度コストをかける必要もあるだろう。とくにパワーアンプ部は電源が大切になってくるので、きちんと考えられた製品は大きく重く、そのぶん高価になってくる。

アンプにコストをかけるとなると、つぎにはスピーカーが気になりだす。リビングのフロントチャンネルに使っているのは、B&W の CDM1SE だ。決して高級機というわけではないが素直で明るい音のする名作だと思う。冒頭に挙げた写真がそれで、見た目もよくて、わが家のリビングのシンボル的存在になっている。これは余談だが、つぎの世代の CDM1NT になると、見た目がへんにヤセ型になって、あまり気に入らなかったことを覚えている。いっぽう最近リリースされているの CM1 は、すっきりとした美しいデザインで、音質的にも評判がいいと聞く。

そんな CDM1SE も、アンプとおなじく10年選手になろうとしている。リビングの日当たりがいいおかげで、自慢のケプラーコーンもすっかり日に焼け、別室の 802D のものと比べると、だいぶ色あせて見える。さて、その CDM1SE はいつまで持つのだろう。アンプを替えると、スピーカーまで替えたくなるような予感がしてくる。

1週間悩んで、結局、割り切ることにした。いろいろ考えた結果、エントリー機種の王道、オンキヨーの TX-SA606X を買うことに決めた。いまAVアンプにコストをかけるのは得策ではなさそうだった。きちんと音楽を聴く環境はべつにあるのだし、マルチチャンネルは楽しさ優先でいこうと決めたのだった。

ちなみに、数年前に一世を風靡した廉価なデジタルアンプもいいかも、と思って調べてみたのだが、これはどういうわけか廉価製品では最近は下火になっているようだった。どこも数年前の機種がカタログに掲載されているだけ、という状態だった。あんなに評判がよかったのに、どうしちゃったんだろう。

これまでオンキヨーのアンプを使っていながら、そう強い思い入れがあったわけでもなかったので、よもや次のアンプもオンキヨーになろうとは思ってもいなかった。ただ世間で好評なのには理由があって、TX-SA606X とその前の TX-SA605 は、機能面では他社にくらべてあきらかに一歩リードしているようだ。これは、総合電機メーカではなくて、音響機器専業メーカであることを考えると、驚くべきことだと思う。

1993年、「平成の再建王」といわれ、大のオーディオマニアともいわれる大朏直人氏のトップ就任後、オンキヨーはとくにIT技術、デジタル技術への展開が目立っていた。なかには、一消費者として見るかぎり危なっかしく感じるビジネスもあるけれど、他社に先駆けての新仕様搭載はそうした積極姿勢のあらわれだろうし、消費者としては心強いかぎりだ。

TX-SA606X は、さきにも触れたように、機能面では「てんこ盛り」状態で、おおいに遊べるアンプだと思う。個人的に決め手となったのは、HDMI1.3a 対応の入力が4チャンネルあることと、シルバー色が用意されていること、そして価格の3点。HDMI 出力が1チャンネルしかないのが惜しいが、とくに複数チャンネルを使用する目的があるわけではないので、あまり強くはこだわらなかった。

肝心の音質は――この価格帯 (\84,000) で、これだけのデジタル・ギミックを満載して、あとなにがどれだけ期待できるだろう、というのが正直なところだ。ここで満足できない場合、おなじ世代、おなじメーカーで考えると、ひとつ上のTX-SA706X ということになり、\189,000 になる。デジタル的な付加価値ではそう大きくコストは変わらないだろうから、この価格差は電源部やアンプ部、シャーシの振動対策 (そして THX Select2 のロゴ使用料(笑)) などにある、と見るのが正しいように思う。つまり TX-SA606X から TX-SA706X へは、正しく音質アップしているだろうと期待できる。おそらくオンキヨーのアンプメーカーとしての本来の持ち味が生きてくるのは、この TX-SA706X あたりからではないかと思う。逆に TX-SA606X はそのコスト差分だけ、TX-SA706X に比べて音質には限界が出るということだ。その差がほぼ10万円分。

これが数万円の価格差だったらきっと悩んでいたと思う。でも10万円の差がついたとなれば、上に書いたとおり、いまは TX-SA606X で、楽しく行けるところまで行く、というのが正しい。と判断した。

ちなみに、他社製品の印象はつぎのようなものだった――デノン(旧デンオン)は一時期は「これに決めた」というところまで行ったのだが、HDMI の入力数が少ないところがどうしても気になった。ボリュームノブのクリック感や、低価格機でもロータリー式のスイッチを多用しているところは好感度大だった。パイオニアの高級機は魅力的だったけれど、低価格機では機能面で見劣りがした。ソニーもよかったのだが、いまのソニー製品を買うと BRAVIA や VAIO を買わなければならないような気がして、気持ちが引いた。パナソニックのシリーズは、デザインがどうしても許せなかった。そんなこんなで、ふたたびオンキヨーの採用――ということになった。

先日の土曜日、近所の量販店に出向いて、この TX-SA606X を5万円台なかばという金額で買った。シルバーは在庫がなく、数日後に届くという。価格面で通販に引けをとらない金額にしてくれたことはありがたかったし、その価格で5年保証がついているのも魅力だった。

先代のAVアンプも、何度か故障を起こしている。突然リアスピーカーから音が出なくなったり、リモコンが効かなくなったり、今回のようにスピーカーの音量が安定しなかったりした。最後の故障をのぞいて、その都度修理をしてもらってきた。前面パネルに髪の毛のような黒い線が印刷されていて初期不良交換ということもあったし、その次に届いたものは、背面のパネルのネジが外れかかっていた(自分で締めた)。だから正直、オンキヨーの製品の品質はそれほどいいとは思っていない。その意味でも、5年保証はありがたい。

この文章を書いている現在、まだアンプは到着していない。到着したら、またしばらくはセットアップやら何やらで当分なにも書けないだろうと思うので、まずはアンプを決めた、というところまでのご報告だ。

ちなみに、わが家のAVアンプでもっともよく使われるのは、FM放送などの軽めの2チャンネルソースを全スピーカーを使って鳴らす、マルチチャンネルステレオという機能だ。これを使うことで、部屋中に音楽が溢れるようになる。

あたらしいアンプがきて、また以前のように、音楽のあるリビングになればいいと思っている。そしてまた、ときどきは映画でも観ることができればいいなと思う。

 

| | コメント (0)

2008年4月 5日 (土)

アイソレーション・トランスと電源ノイズと

IsolationPower ぼくの家はマンションで、眺望はとても気に入っているけれど、オーディオ的な観点では決して最善というわけではない。角部屋なのでオーディオ部屋のとなりには家はない。でも上と下にはべつの家庭がある。そこに住むひとたちへの影響を心配しなくてはならないし、それになにより、電源事情がよくない。

歴代のパワーアンプは、ときどきトランスのうなりを発してきた (ジェフ・ロゥランドの ICE Power の Model 201 だけはうなりを聞いた記憶がなかった)。はじめはそう古いわけでもない自分の家の電源がわるいとは夢にも思わず、販売店やメーカーに見てもらったりもした。まあ、どこも言われることはおなじで、環境によってはそういうこともある、ということだった。


3年間の転勤生活を経てこの家にもどってくるとき、壁紙を変えたりする程度のリフォームをやった。そのついでに、まえから目論んでいたオーディオ専用のブレーカーをつけた。引越しと同時にそのあたらしい電源環境を使うことになったから、専用ブレーカーをつけるまえとの比較とか、そういったことは楽しめなかったけれど、精神的にはとても安らかな (笑) 気持ちになった。

それでもトランスのうなりはときどき発生した。深夜、静かになったときに「ブーン」という低いうなり声が聞こえてくると、なんだかとても気が滅入るものだ。うなったからといって問題があるわけでもなさそうなのだが、そうはいってもやはり気になる。

それが、あるときから状況が変わった。アイソレーション・トランスを導入したのだ。正確にいうと、アンソレーション・トランスは以前から持っていたのだけれど、なんとなく音に力感がなくなるような気がして、結局パワーアンプはつながず、ふだんはプリアンプだけつないで使っていたのだ。

ある日、思いついてふたたび、このアイソレーション・トランスにパワーアンプをつなげてみた。そのまま数日が過ぎて、パワーアンプをつないだことも忘れてしまったころ、気がつくと、そのアイソレーション・トランス自身がブーンとうなっていた。パワーアンプはまったくうなっていない。ためしに再度パワーアンプを壁コンセントに直接つなぐと、やっぱりアンプ自身がうなる。

うなるとはいっても、いつもうなっているわけではない。何日も異常のない状態がつづいたあとで、気がつくとうなっていた、という感じだ。だから、このアイソレーション・トランスを入れたり外したりという実験は、1週間単位でようすを見るという、とても気のながい作業になる。それに1週間起きなかったからといって、これからも起きないという保証もない。

何回か試してみた結果、やはりアイソレーション・トランスを入れるとアイソレーション・トランス自身がうなり、アンプはうならない。アイソレーション・トランスをはずすと、アンプがうなる。ということのようだ。

ここにきてようやく、ぼくは、やっぱり自分の家の電源がまずいのだな、と思うようになった。そして同時に、過去いろいろ対応してくれた販売店、代理店、メーカのみなさんに申し訳ないことをしたな、と思った。

オシロスコープでAC電源の波形を見てみると、なにかおもしろいものが見られるのかもしれないけれど、残念ながら借りるにしてもそのアテがない。

まあ――オーディオ用にブレーカーを増設したからといって、この家、あるいはこのマンション全体で使用している元の電源が変わったわけではない。回路的にはすべてつながっているのだから、やっぱり影響は排しきれないのだろう。

逆に、音質という感覚的な側面以外で、このアイソレーション・トランスがちゃんと仕事をしているんだな、とはじめて実感できた瞬間でもあった。

ちなみに、これは純粋直感中心素人発想 (笑) なのだが、アイソレーション・トランスを入れると音に力感がなくなるという話は、どうも電源に含まれているノイズ成分が、音の力感や、それに似た鮮度感を錯覚させているのではないか、と思うようになった。それは、波形生成ができるソフトウェアなどを使用して、純粋なサイン波を生成した場合と、べつの周波数を重畳させてみた場合とで比較すると、わりと直感的にわかる。もしノイズ成分が人間の聴覚に好影響を与えているのだとしたら、これはまたややこしい話だ。このあたりの議論は、あまり突っ込むと果てしないところにまで行ってしまいそうなので、これくらいに (笑)。

 

| | コメント (5)

2007年10月21日 (日)

B&W 802D と 部屋の対策 (その2)

Wall2以前ご報告した通り、B&W の 802D が到着してから、気持ちはすぐに部屋のほうに向いていった。これはスピーカーを変えることで、ようやく関心が機器からその周辺へと向ける余裕ができるようになってきたということと、最初から心配していた通り、部屋の大きさを考えればすこし大きめのスピーカーを入れているので、音が飽和しきってしまうのではないかと懸念したからだった。

ウーファーの大きさから言っても、ALR/Jordan Note 7のアルミ15cmの2発から、B&W 802D はロハセル20cmの2発にかわり、音量というよりは音圧が強くなった。大きめの音量のときには室内の机などが振動しているのがわかる。部屋をデッドにしすぎてはいけないと言われつつ、こうした余計な振動は雑味の原因となりそうなので、これはこれで対策を考えていこうと思っている。


§

そんななかで今回手を入れたのは、スピーカーの反対側の壁面にあるクローゼットの扉。高さ2.3mの細長い板2枚。いかにもたわんで振動しそうだし、実際に手でそっと触れてみると振動しているのがわかる。このクローゼットの扉の表面に、簡単な吸音材を置くことにした。

Thinsulate 素材は、住友スリーエムの誇る吸音断熱素材シンサレート。吸音素材としては自動車や建築素材として利用されており、今回は関係ないけれど断熱素材としてはスキーウェアなどのスポーツウェアに採用されている。

このシンサレートをオークションで入手して、1500mm×350mm の吸音材を2枚、製作した(正確には、女房に作ってもらった)。長さが1.5mもあるので、特別な機械もなく、ちびっ子が暴れまわるわが家では、裁断と縫製が大変だった。ぼくが家にいる休日の深夜、子供たちが眠ってからの作業にならざるを得ないし、シンサレートにしても生地にしても、広い範囲をまっすぐに切ろうとすれば、それなりに場所もいる。熱帯夜のなか、たいして広くもない家のなかを移動しながらの作業だった。裁断のあとは、女房が黙々と(ブツブツと)布端部をマツリ縫いをして、袋状に加工をした。

シンサレートは13mm厚。いろいろ考えて2枚重ねにした。これ以上厚くするとデッドになりすぎるような気がした。理屈の上では26mm厚になるはずだが、多少は圧迫されて薄くなるので20mm程度。面積が大きいことも関係してほとんどシート状という感じだ。これを近所の手芸店で買ってきた綿100%の生地でカバーしている。背面はホック止めにして、吸音材の入れ替えや調整ができるようにしてある。

設置はとても簡単だ。ホームセンターで買ってきたコの字型の金具を吸音材の上部にフック代わりにつけて、クローゼットの上から吊るすだけ。大きいこともあって軽量素材ながらそれなりに自重もあって、すっと下まで自然に垂れ下がっている。クローゼットの扉の開閉もなんら問題なし。

それで肝心の効果のほうはといえば、これはプラシーボの可能性もあることをお断りしたうえで言うのだが、期待以上だった。音の雑味が減って静けさが増し、スピーカーからの音がより明瞭に聴こえるようになった。前面を覆うこの吸音材のおかけで、扉がびりびりと振動することもなくなった。結果としては充分満足している。クローゼットの扉に吊るしているだけなので、いつでも簡単にはずして比較実験もできる。でもまあ、充分改善には満足したし、部屋もぼくの耳もなじんでからはずしてみても遅くはない。それで効果がなかったということになったら女房に殺されるような気がするから、べつに無理に比較実験などする必要もないのだが。

§

つぎは、上で書いたように机など家具の振動対策か、あるいは―― これはそれなりに勇気をもってやらないといけないのだが―― 天井の対策である。家具の振動対策は、たぶん見えないところに制振素材を貼っていくことになると思う。天井はいまのところ具体的な案はない。QRDのスカイラインがよさそうな気がしているものの、見た目の問題と価格面でちょっと躊躇するものがある。できれば今回のように自作できれば楽しくていいのだが、また楽しいのはぼくだけ、ということになりそうな気はする。

Annotations :
シンサレート : Thinsulate
公式サイト: 住友スリーエム Thinsulate

| | コメント (0)