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2016年5月21日 (土)

ラトル、ベルリンフィルのシベリウス交響曲全集

BPHR170_Sibeliusシベリウスの交響曲を、また改めてきちんと聴こうと思う日がくるとは、本当には思っていなかったような気がする.

…なんて、ちょっとへんな言い方になったが、それはずっとむかし、まだクラシック音楽を聴きはじめて間もないころから、シベリウスは数少ない “好きな” 作曲家のひとりだったからだ。

当時まだ十代あるいは二十代前半くらいだったと思うが, プログレッシヴ・ロックを経由してクラシックに入門したばかりのころ、あるきっかけがあって≪フィンランディア≫ という楽曲を知った。詳しい方には言うまでもなく、フィンランドでは第二の国歌と言われるほど著名な、勇壮で美しい旋律の楽曲である。


そして、交響曲の第2番。はじめて接したのは、サイモン・ラトル指揮のバーミンガム市交響楽団による1984年の演奏だった。これはたしかFMのエアチェックで録音したものだ。北欧、森と湖の国、フィンランド、厳冬の地、そうした印象そのままの美しさと、終楽章の開放感・躍動感が魅力的だった。これは、もう何度となく愛聴した。

つづいて、ほかの交響曲も聴くようになった。買ったのは、たしかカラヤン指揮の廉価版LPだった。全曲ではなく、第4番、第7番。そういったあたりだったと思う。

このあたりから、なにかがズレはじめた。(^^;

いっこうに聴きたいと思わせるものが響いてこないのである。あとで知ったのだが、シベリウスの交響曲は第2番が突出してポピュラーで、ほかの交響曲はそれに比べると知名度としては落ちる。それはつまり「わかりやすさ」という点で第2番がもっとも勝っているということだ。そしてその世間の風評はまちがっておらず、ぼくはシベリウスが特別に好きだというよりは、たんに名曲を名曲だと思っただけなのかもしれない。と心の隅で思ったりもした。

Sibelius交響曲以外を見渡してみると, わかりやすいシベリウスはほかにもいる。CD時代になって、大阪日本橋の小さな輸入盤屋――お店の名前は失念してしまった――でFINLANDIAレーベルから発売されていたアルバムを、いくつか買うようになった。なかでも、Pekka Helasvuo と Finlandia Sinfonietta によるシベリウスの小品集は録音も美しく, このアルバムで ≪悲しきワルツ≫ や ≪鶴のいる風景≫ といった佳曲を知った。あるいは、右上にジャケット画像を挙げた、Tauno Satomaa と Candomino Choir による合唱曲集。これはシベリウスだけでなくフィンランドの作曲家の合唱曲を集めたものだが、孤高のジャケットも録音も楽曲も、すべてが美しい。

話を交響曲に戻そう。その後、たとえば全集ではベルグルンドやサラステ、マゼールの録音を買った。どれもダメだった。そして少々ショックなことに、良いと思っていた交響曲第2番も、聴き通すほどの魅力を感じられなかったのだ。

依然としてシベリウスの名前はすこし特別な位置にはあるのだけれど, その後は、おりに触れ歌曲集や協奏曲のCDを買ったりはする程度というになり、積極的には聴かなくなってしまった。というよりは、むしろ疎遠になった。それは、より広くクラシック音楽を聴くようになり、そのころはほかの楽曲を知るので精一杯だったというのもある。このとき、ぼくはまだバッハやモーツァルトの幾多とある楽曲を知り、ベートーヴェンが特別視される意味に気がつき、ブラームスやワーグナー、そしてブルックナーやマーラー、ストラヴィンスキーを知っていく途上だったのだ。

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それが最近、自分でも不思議な変化が起きた(たぶん年齢のせいかと(^^;)。"これまでときどきはつきあってきたものの、あまり積極的には聴いてこなかった作曲家" の作品を聴きたいと思うようになった。たとえばシューマン。たとえばシューベルト。そしてシベリウス。

とくにシベリウスへを聴きたいという気持ちは、すこし大げさだが、突然渇望のようにやってきた。去年のシベリウスイヤーには、ぴくりとも反応しなかったのに (うそ。リントゥの交響曲全集ブルーレイは買った。でもブルーレイの使い勝手の問題もあり、未視聴のままだった)。そして、最近サイモン・ラトルがベルリン・フィルと新しい全集を出していたことを思い出した。

この全集は、以前紹介したシューマンの交響曲全集と同様、”Berlin Phil Media” (Berliner Philharmoniker Recordings) によってハイレゾ録音含めた複合的な形式でリリースされている。そのオーディオ的な興味ももちろんあった。これを買った。

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これが、素晴らしかった。第2番はもちろんとして、すべての交響曲が魅力的だった。どの曲も聴き入ってしまうほど良かった。とくに第5番、第6番、第7番の3曲は、先日の連休以降、何回となく聴いている。

深い碧色であるにもかかわらず、どこまでも透明度が高く、細部までくっきりと見渡せる――そんな印象だ。とても美しく気持ちが良い。たとえば比較的地味な第4番の第1楽章は、その鮮明な音のおかげで、いまこれを書いていても、思わず聴き耳を立ててしまう。また、よく「呼吸感」と表現するのだが、ゆっくりとした部分、疾走する部分、それぞれのテンポ感が感覚としっくりとくることも好印象を支えている。このテンポ感が、ラトルならではのものなのだとしたら、シベリウスの交響曲については、このベルリン・フィルとの録音があれば、ぼくにはもうそれでいいのかもしれない。

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最後に、購入した Berlin Phil Media のシベリウス全集のメディアの話。

前の記事で、リリース第1号のシューマンについて「所有する喜びを感じさせるパッケージ」と絶賛しておきながら、結局、ダウンロードしたハイレゾ音源を聴くばかりで、いまに至るまでパッケージはいちども手にとっていないことに気がついた。(^^;

それで今回は、Berlin Phil Mediaから直接ダウンロード音源を購入することにした。パッケージ版は日本円でだいたい14,000円。ダウンロード版だと現地から直接購入で €49.00。なお、ダウンロード版はブックレットはPDFで付属しているが、特典映像はついておらず、音楽のみである。

 

 

Annotations :
Rattle/Sibelius packageシベリウス/交響曲全集
Simon Rattle, Conductor
Berliner Philharmoniker, Orchestra
Berliner Philharmoniker Recordings
Link : Amazon.co.jp

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