Mike Oldfield, CRISES TOUR (1983)
数年前から、1年に2作品ずつというペースで Mercury が Mike Oldfield の過去作品の再リリースを行っている。
最初はあまり興味を持っていなかったのだが、よく考えればぼくの持っている音源も相当に古い。LPのものはさすがにCDに買い直してあるものの、そのCDにしてもたとえば今回のCRISESは、手許にあるのは1983年にリリースされたものだ (その年に買ったのではないと思うが、CDのカタログ番号を確認してみても、やはりVirginのオリジナルだ)。
さすがにいま買い直せばリマスターの恩恵にあずかれそうな感じもするし、特典としてついてくる音源もまあまあの音質のようなので、魅力的な企画に思えてきた。それで、この Mercury の発売ペースにあわせて、買い直すことにした。
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今回は、”Five Miles Out (1982)” と “CRISES (1983)” の2作品。届くまでとても楽しみだった。ぼくはこの2作と、つぎの “Discovery” あたりの作品が好きだ。
作品そのものの魅力とか、リマスターの効果とか、語り出したらキリがないのでここでは触れない。 “CRISES” には、特典のひとつとして1983年、ロンドン Wembley Arena での “CRISES TOUR” のライブの一部が収められている。
アルバム “CRISES” のメインは、同名の “CRISES” という曲である。この曲をライブで聴くのははじめてだ。 TuneBrowser の改修とテストをしながら、さっそくこの曲から聴きはじめた。音楽用のソフトを開発していていつももどかしく思うのは、音楽を聴きたくて開発をしているはずなのに、デバッグやビルドのためにしょっちゅう音楽を止めなければならないということだ。自分用に複数起動を許すという手もあるが、さすがにプロセス間排他のない一元データベースのソフトではそれは危なっかしい。それで、デバッグも佳境になると再生には foobar2000 などべつのソフトを使うことになる。自分のソフトがいちばん使いやすく、内部を知っているがゆえに音も良いと思っているので、これはじつに不本意である。
話がそれた。言い忘れたが、楽曲 “CRISES” は20分以上の大作である。そのライブでの演奏は、荒削りなところも感じられなくはないが、それはライブらしい勢いであり、期待以上だった (期待は禁物と思っていたのも関係しているかもしれないけど(^^;)。音質もFMラジオのような感じで悪くはない。まずは買ってよかったと思った。
“CRISES” は後半から、ミニマルな旋律がひたすらつづくなかで、パーカッションが怒涛のごとく突進していくシーンがある。迫力のあるヤマ場であり、どうしたって盛り上がるところだ。ライブでいったいどれだけこの迫力を再現できるのだろう――そう漠然と考えながら聴いているうちに、15分あたりからドラムスがはじけるような自己主張をしはじめた。おや、と思っているあいだにも、どんどんドラムはものすごいことになっていく。スタジオ録音よりも激しい。しかも鋭いキレがある。
驚いてデバッグの手を止め、ブックレットを確認した。そこには Simon Phillips の名前があった。ああ、と思わず声に出た。それは驚くような話ではない。そもそも Simon Phillips は “CRISES” のスタジオ録音にも参加している。というよりこのアルバムのスタッフのひとりであり、「怒涛の突進」を叩いている本人である。ただぼくは先入観で、ライブでは Simon Phillips ほどの人物は参加しておらず、べつの人が叩いているのだろうと勝手に思い込んでいたのだ。だが聴いただけでこれはタダ事ではないとわかるドラムスで、その存在を強烈にアピールしていた。さすが、と感心せずにはいられなかった。
このアルバム、ほかに Unplugged な “Moonlight Shadow” などいろいろ聴きどころはあるけれど、なんといってもこの “CRISES TOUR” ライブでの Simon Phillips がいちばんの聴きモノだと思う。
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Mercury の再発シリーズは、次はいよいよぼくの好きな “Discovery” である。次といってもそれはまた1年後の話になるし、1年後なんてなにがどうなるかわからないから、いまのうちにひとつ自慢話を(^^;。ずっとむかし、ラジオから流れてきた女性ボーカルの知らない曲を聴いているうちに「これは Mike Oldfield の曲にちがいない」と確信し、当てたことがある(^^;v。演奏が終わったあと、ラジオのアナウンスはその美しい曲が “To France” だと教えてくれた。それがアルバム “Discovery” に収録されているとわかると、もちろん、ぼくはすぐに難波のタワー・レコードに買いに走った。難波のタワー・レコードなんて、どれだけむかしの話なんだか、という話だが。
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