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2008年12月の1件の記事

2008年12月30日 (火)

1週間だけの引っ越しと電源200V化

200V 秋の運動会から今日まで、とても忙しかった。去年は去年で思うところがあり、一念奮起して担当者の仕事に戻って腕が痛くなるほどコーディングをして、要するに仕事で忙しかったのだが、今年はプライヴェートな生活が忙しかった。

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ことの発端は、そろそろ築10年になろうかというウチのマンションで、いまさらながら不具合が発見されたことにある。

いったい誰がどうやって発見したのかいまもってよくわからないのだが、外壁と内壁(石膏ボード)のあいだの吹きつけ発泡式の断熱材が規定の厚さに達していなかったのだという。調べてもらったらわが家もそれに該当していた。20ミリのはずが17ミリだった、とかいうレベルで、たいして断熱性能は変わらないといいつつも、不具合にはちがいないので、無償でやり直すという。「やり直す」と簡単に言っても、約1週間の工事期間中は家を空ける必要があり、家具は業者が移動するものの、その中身は住人が空にしておかなければならない。そのあいだの住居は、業者が借り上げたマンション内の空き住居を使用することになるので、その住居に生活に必要なモノも自分で移動させなければならない。


うちのマンションは数棟から成り、大規模マンションといえる規模だと思うが、ほとんどの住居がこの不具合に該当したということもあり、工事は1年以上かけて行われている。工事のあと業者が無償で壁紙をすべて新しいものに張り替えるとあって、マンション全体がにわか「壁紙バブル」の様相を呈している。10年ほど経過して、そろそろくたびれてきたかも、というころになって、無償で壁紙を新しくしてくれるというのだから、それは考えかたによっては願ってもない話だ。

わが家はといえば、このあいだ横浜からもどって、数十万円かけて内装をやり直したばかり(爆)。いまさら内装が新しくなったって、べつにそううれしいわけでもない。数ミリという断熱材の差と、「家じゅうのものをすべて箱詰めして1週間だけ引っ越す」という途方もない手間を天秤にかけて、くよくよと悩んだ。ぼくは――もちろん――咄嗟に、B&Wの802Dの移動のことを心配した。そしてうんざりする量の本とCD。それを収納する大きな書棚。天井のQRDモドキ。水槽....。

結局、半年以上前に工事を申し込んで、この年末にようやく順番が巡ってきた。

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工事と引っ越しそのものは、予想どおり大変だった(笑)。年末ということで、引っ越し以外にもさまざまなことが重なったということもある。あと十年か百年くらいしたら笑って話せるかもしれないけれど、いまはまだそのインパクトが残っていて、とてもそんな気になれない。夜中の0時すぎ、水槽とその配管やバケツを台車に乗せて移動させる姿は、異様すぎて誰にも見られたくないものだった。

いちばん心配した、スパイクつきで片側80kgのスピーカー B&W 802Dは、なんとか人も家も自分自身も傷つけることなく、べつの部屋に移動して、1週間後にもどってきた。持ちあげて扉をくぐろうとするときに、うっかりダイヤモンド製の頭(笑)を枠にぶつけそうになって息を呑んだりはした。GOLDMUND のアンプとCHORDのDAC64は、つまらない事故を避けるために、あらかじめ自分で元箱に詰めておいた。

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さて、じつはこの機に乗じて、オーディオ用の電源を200Vにした。まえに、オーディオ用には専用のブレーカをつけている、という話をした。だから、べつにやろうと思えばいつでもやれる話だったのだが、工事のためスピーカーを移動させたすきに、壁コンセントを100Vのものから200Vに交換しやすくなったこと、それから、たまたま機会があってGOLDMUND MIMESIS 18.4MEの200V対応への変更方法を教えてもらったこと、などが重なって、この機会にやることにしたのだ。

ちなみに、おなじGOLDMUNDのプリアンプMIMESIS 27MEは、背面のスイッチで対応電圧を簡単に切り替えられるようになっている。それと、CHORDのDAC64 Mk2はCHORDの誇るスイッチング電源で、100Vから240Vまで自動追従だ。だから、ぼくの200V環境は、トランスで100Vや115Vに降圧して使うのではなく、プリアンプ、パワーアンプ、DACの3大機器に直接入力して使うことになる。

200Vという電圧の意味は、正直微妙だ。ただ、100Vという電圧で使用するよりも、200Vでより少ない電流で使用するほうが力感が得られやすいような気がすること、それから、GOLDMUNDの本国のマニュアルではなぜか、110V設定の場合は 105Vから120V、220V設定の場合は 200Vから240V、で使用するようにと書かれていて、100Vが含まれていないことなどから、100V駆動よりは200V駆動のほうが良いような気がしたのだ。200V化したいという気持ちは強いものの、動機を筋の通った理由で説明しようとすれば、所詮そんな程度の話になってしまう(笑)。前回電源トランスのときにも書いたように、そもそも電源ケーブルをかえて音がかわる、という基本中の基本の話からほとんどすべて、理屈を問えば不思議としか言いようのない話ばかりだから、たいしてコストのかからない 200V化も、その一環として楽しめればそれでいい、というふうに考えたほうがよさそうだ。

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小さい工事でもやってくれる近所の電気屋さんにお願いして、ブレーカーを切り替えてもらった。工事費5千円。事実上出張費だけということのようだ。周囲で壁紙工事が行われているなか、ついでに分電盤もきれいに掃除して、ほかのブレーカーのネジの増し締めをしていってくれた。壁コンセントも、100V対応のPS AUDIOのPOWER PORT――そんなに思い入れのある品物ではない――から、あらかじめ用意しておいた明工社のME2830になった。電源ケーブル側は、おなじ明工社のME7021をプラグとして装着した。とくにプラグについては、もうすこししっかりしたものが欲しかったのだけれど、プラグ形状とメッキの関係から、すぐに手に入りそうなのはこれくらいだった。壁コンとプラグは、いずれもインターネットの電材屋さんから入手した。

10分程度の工事が終わり、電源環境は整ったのだが音は出ない。なぜならぼくの部屋はまだ空っぽなのだ。やがて大きな家具が設置され、802Dももとの場所に収まった。これからの計画はこうだ――家具を据えつけたあと、本やCDをもどすまえに、オーディオ機器の結線と復帰をさきにやって、音出しまでやってしまう。中身のない家具は簡単に動かせるから、場合によってはもうすこしじっくりとセッティングを追い込むこともできるかも。

でもそれは、浅はかな考えだった。

別室にしまってあったアンプを開梱し、さらにはPCも設置した。数時間かけてすべての結線を済ませ、念のためもういちどテスターで電圧設定を確認して、多少緊張しながら電源を入れた。音は出た。それは聴きなれない、残響の強い音だった。

これを読んでおられる貴方と同様、ぼくも聴いた瞬間、なにが起こっているのかすぐに理解できた。空っぽの本棚が響きを増やし、音をぼやけさせているのだ。スピーカーのあいだに空っぽの本棚があると、定位がかなり不明確になってしまう、という当然の事実を、ぼくはこのときはじめて体感した。

この音では、じっくりと追い込むなんて、とても無理な相談だった。結局、その場ではできる範囲での確認と微調整をして、早々に本とCDを運び込むことにした。段ボール箱を積みあげた部屋にいる女房が荷物をとりだし、子供たちにわたす。子供たちは、その部屋とぼくの部屋とのあいだをせっせと往復して荷物を運ぶ。小学生以下だから期待できる献身と熱意。ぼくはそれを受けとって本棚に納める――そんなバケツリレー的作業は休憩含めてさらに数時間かかり、低域の周波数特性を改善してくれる天井のQRDモドキももう一度接着して、復旧したのは次の週末――この週末――のことだった。

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1週間の引っ越しで、結局、改善できたのは細かい部分だけだった。本棚の側面につけている吸音材をきちんと固定できるようにして、耐震補強をして、以前から気になっていた位置も数cm程度ずらした。絵の位置も壁紙もかえて、すこし気分もかわった。じつのところ、そんな細かい話よりも、家全体として事故や破損、改悪点もなく無事に終わったことの安堵のほうが大きく、改善など望む心境ではなかった。

そんな状況での小さなイベント――200V化の効果はといえば、正直、期待していたほど大きなものではなかった。200V化にあわせて、アイソレーション・トランスをはずしたり、電源ケーブルがかわったり、と、周辺の変化もあったりして、どれがどの効果なのか、というのは一概にはつかみにくい。

Haitink-CSO-Mahler0 ただ劇的な変化がなかったとはいえ、力感とそれに伴う解像度はまちがいなく上がったようだ。マーラーの交響曲第3番、以前紹介したハイティンク指揮シカゴ交響楽団の演奏で聴いてみた。冒頭のファンファーレのあと、静寂のなかで小さくバスドラムの鼓動が響く。このバスドラムの音が、はっきりと明確に聴きとれる。強奏部分でも、以前より余裕で鳴っているように聴こえる。

これがプラシーヴォかどうか、というのは自分ではなかなかわからない。いずれにしても、機器たちは200Vでまあまあ快調に動作しているようだ。これから鳴らしこんでいくにつれ、さらに良くなっていくだろう、という期待は充分に感じさせてくれる。

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