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2008年8月の2件の記事

2008年8月17日 (日)

市立のプラネタリウム

SkyPark 今年の夏は、いつもだれかどこかの調子が悪く、結局子供たちをプールに連れていくことができなかった。今週末は、こんどこそと思っていたら、不覚にもまえの晩にぼくがひざをざっくりと怪我してしまった。なかなか血が止まらないし、その傷をプールにつけるのは、周囲のひとたちのためにも自分のためにもよくないような気がした。それで、子供たちのありありとした失望感に胸を痛めつつも、中止した。これはどう考えても埋め合わせが必要だ。ということで、かわりに隣町(市)のプラネタリウムに出かけることにした。


小さな市営の施設で、驚いたことに――ぼくが無知だっただけだが――プラネタリウムの演目はその施設のオリジナルだった。きちんとナレーターがつき、参加者たちとインタラクティブに会話をしながら50分間の演目が進んでいく。このナレーターの女性の語り口はとても上手で、適切な関西弁 (?) がなかなかチャーミングで心地よかった。今回はお盆休み中ということで、そこそこ観客が入っていたけれど、平日は2組しかいないとか、そういう状況だという。それでもたぶん、この50分にわたる演目を、きっちりとやっているのだろう。収益性はどうだとか無粋なことを考えてしまうのは事実だが、そういう状況下でこうした手作りの演目を企画し実現している姿勢には頭の下がる思いだった。

そうしたライヴ感は内容にも生かされていて、この地域の夜景から頭上の夜空へと話題がつながり、数日後の月蝕の話まで、固定的・画一的な内容の上映では実現できないリアル感、親近感に触れさせてくれる。

そのかわり――そんな手作り感のある演目には、逆に限界を感じさせてしまう瞬間もあった。演目の途中でビデオ上映による「季節の出し物」があり、紙芝居的なキャラクターが延々と説明をつづける。星空の話題から外れるのであれば、せっかくの大スクリーンなのだから、キャラクターが画面を飛んだり跳ねたりするだけではなくて、もうすこしいろいろ映像・画像を見せてほしいように感じた。

施設の規模から察して、予算の限界ということもあるのだろうと思う。そうした制約のなかで、施設独自の企画を起こしていこうという心意気はとても立派なことだし、そうした施設が地元にあるということは利用者としても心強い。でも地域性にかかわらない固定的なビデオ作品なのであれば、その施設独自ということにこだわらず、全国の同種の施設の横のつながりなどを利用して、共用の作品を用意するというわけにはいかないのだろうか。そうすれば、予算の制約ももうすこし広げられると思うのだけれど。

このプラネタリウムに隣接する特設フロアでは、「科学おもちゃ」の展示が行われていた。ここでは、この施設の手作り感がとてもよい方向にあらわれていた。展示の多くは、ペットボトルや木材、段ボールを使った手作りのもので、子供たちも親しみを感じやすく、楽しそうだった。

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AirPlane この科学館は、空港のすぐ隣にあり、騒音緩衝地帯を利用した大きな公園が近くに整備されている(駐車場はこの公園の施設を利用する)。冒頭の写真は、この公園でのスナップだ。空港のすぐ近くだから、この右の写真のようなシーンを間近で見ながら遊べるようになっている。公園はあたらしくて設備も充実している。

月に何回かはこの空港を利用しているから、移動手段としては日常的につきあっているハズなのだけれど、あらためてこうして航空機の離着陸を見ていると、なんとなく心が浮き立つというか、魅せられてしまう。過酷な炎天下の日だったにもかかわらず、たくさんの家族がここで遊んでいた。子供たちは疲れを知らず――といいたいところだが、あまりの暑さにさすがにぐったりしてきて、結局その日は早めの撤収ということになり、そのまますぐ近くのAEONモールに向かった。

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2008年8月 3日 (日)

ヒラリー・ハーンのヴァイオリン、バッハ、シェーンベルク、シベリウス

Hilary-Hahn 米国出身のヴァイオリニスト、ヒラリー・ハーン (Hilary Hahn) が大活躍している。これまでその容姿から、なんとなくアイドル系というような先入観――思い込みがあって、あまり興味も惹かれないできたのだが、どのレビューを見てもかなり好評なので、見識をあらため、聴いてみることにした。

買ったのは2枚。J.S.バッハのヴァイオリン協奏曲集 (2003年) と、シェーンベルクとシベリウスのヴァイオリン協奏曲集 (2008年)。いずれもDGからリリースされている。


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Hahn-bachはじめに、バッハの協奏曲集を聴いた。最初の音が出た瞬間から、その太くて力強く、まるで突撃するような演奏に、すこし驚いた。テンポが速かったからではない。ハーン自身がこの演奏を「速い楽章では爪先で床を鳴らし、曲にあわせて踊っていただけたら幸いです」と紹介していたくらいだから、そういうテンポだろうというのは想像がついていた――というか、決して速すぎるということはない――驚いたのは演奏が一本調子に聴こえたからだった。

太いマジックで、キュッと力強い直線を引いたような演奏。それは緩徐楽章でも印象は変わらない。これはもしかしたら、伴奏を務めるジェフリー・カヘインとロサンゼルス室内管弦楽団――両方とも不勉強ながら聞いたことのない演奏家だ――のキャラクタに引っ張られているのかもしれない。

躍動感や生命感といった音楽の印象と、力強さとは多少ちがうものだと思うけれど、それを取り違えてしまっているかのようで、すこし残念な感じだ。テクニック的には申し分なく、それを力技で押し切っているような印象になってしまっている。

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Hahn-Sibeliusそんなハーンの演奏は、もちろん、シェーンベルクとシベリウスではいい方向に作用する。シベリウスはともかくとして、シェーンベルクのヴァイオリン協奏曲はぼくはそう滅多には聴かない――というか、ちゃんと聴いたのは、このCDがはじめてだと思うし、まさにそれこそがハーンの意図なのだろう。

12音技法という――あまり楽しくない――あたらしい世界を開拓したシェーンベルクの音楽を、いったいどれだけの人が聴くのだろう。たぶん、クラシック音楽がある程度以上に聴きこんでいるか、あるいは音楽そのものを生業として学んでおられる方々くらいだろうと勝手に想像するのたが、それは、20世紀初頭、シェーンベルク、ベルク、ヴェーベルンという新ウィーン楽派の面々が、それまでのロマン派時代の閉塞感からの突破口として、音楽を専門家向けの象徴表現にしてしまったことによるのだろう。

ハーンの演奏は、そんなシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲を、音楽としてぐいぐいと力強く引っ張っていく。おそらく、これがハーンのヴァイオリンでなかったら、ぼくは最後まで聴きとおせなかったかもしれない。そしてそれをサポートするサロネンの指揮も、重厚・冷静でありながら充分に躍動的で、しっかりと聴かせる。これはシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲演奏の代名詞のひとつとして、ながく残っていく名演だろう。

シベリウスのヴァイオリン協奏曲も、基本的にはおなじ演奏表現だ。明晰で、太く、力強い。ここは正直なところもうすこし細くてもいいんじゃないか、と思うようなところもあるにはある。あるいは全体に冷静な演奏なので、北欧の作曲家シベリウスの情念のようなものを、もっと熱く、感情的に表現してくれてもいいのではとも思う。だが、シェーンベルクの演奏がそうであったように、とてもわかりやすくて、音楽を明確に聴かせてくれる。

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ジャケットの写真で見るハーンの表情は、演奏の印象どおり、理知的でクール、というか少々冷たすぎるように感じるほどだ。それで、この文章の冒頭の写真には、CDのインナーに掲載されていた笑顔のものを選んでみた (笑)。

YouTube には、インタヴューに答えるハーンの姿もたくさん掲載されている。そこでの受け応えを見ていると、誠実でアグレッシヴ、明晰で明るいハーンの姿が見えてくる。やはり演奏での印象のとおり、まっすぐである。バッハの演奏では、それがあまりいいようには感じられなかったけれど、実演の演奏ではまた印象が異なるという話も聞くし、これからを代表するヴァイオリニストのひとりとして、今後の活躍が楽しみだ。

 

 

Annotations :
アルノルト・シェーンベルク : Arnold Schönberg (Schoenberg)
1874年9月13日、オーストリア、ウィーン生まれ。戦時中に亡命し、1951年7月13日、アメリカ、ロサンゼルスで死去。本文中で触れたように、1900年ごろから無調音楽、12音技法を開拓した。アルバン・ベルク、アントン・ヴェーベルンとともに新ウィーン楽派と呼ばれる。
ジャン・シベリウス : Jean Sibelius
1865年12月8日生まれ、1957年9月20日没。フィンランドの国民的作曲家。民族性と北欧の自然を感じさせる楽曲が多く、日本でも人気が高い。かくいうぼくも、かつてクラシックを聴きはじめた際に愛聴したのが、モーツァルトとこのシベリウスだった。
J.S.バッハ/ヴァイオリン協奏曲集 :  J.S.Bach/Violin Concertos
Hilary Hahn, Violin
Jeffrey Kahane, Conductor
Los Angeles Chamber Orchestra
DG: 474 199 2
Link : HMVジャパン
シェーンベルク・シベリウス/ヴァイオリン協奏曲集 :
Schönberg・Sibelius/Violin Concertos
Hilary Hahn, Violin
Esa-Pekka Salonen, Conductor
Swedish Radio Symphony Orchestra
DG: 00289 477 7346
Link : HMVジャパン

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