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2008年4月27日 (日)

インマゼール&アニマ・エテルナによる、ベートーヴェン交響曲全集

Immerseel-Beethoven2 ジョス・ファン・インマゼールと彼の古楽器オーケストラ「アニマ・エテルナ」による、ベートーヴェンの交響曲全集が発売された。

インマゼールの名前は、ちょっとロリン・マゼールと似ているな(笑)、とか、そういうつまらないところで覚えていて、あとは学究的な演奏をしているひと、という程度にしか知らなかった。今回ベートーヴェンの交響曲全集を出すというので、その取り組みが目を引いたのと、HMVが全面的に「推す」姿勢をとっていたので、店のおすすめに従うようなかたちで、2月から予約をして楽しみに待っていた。つい最近まで、この見慣れない絵画によるベートーヴェンのジャケットは、HMVクラシックのトップページのどこかにいつも掲載されていたような気がする。


これは輸入盤なのだが、なかにはキング・インターナショナルによる日本語の小さなブックレットが入っている。これはインマゼール自身によるremarksを邦訳したもので、ふだんあまり勉強する機会のないぼくには、とても面白かった。それは『ピリオド奏法とテンポとベーレンライター版』のときにぼくも浅学ながら触れたような「なにを最終稿とみなすか」という問題であったり、その過程でデル・マーとのウィーン学友協会図書室の資料上での邂逅があったこと、そしてもちろん、ベートーヴェンが活躍した当時の楽器を用いてそれを再現しようとすること、あるべきオーケストラ編成、音響など、この全集を形成する上での考察がまとめられている。

さて、実際の演奏はといえば、簡潔にして明瞭、活き活きとして、とても魅力的だ。ベートーヴェンによるメトロノーム記号表示にしたがっているのでテンポも快走、でも決して早すぎると感じることはない。このベートーヴェン自身によって書かれたメトロノーム記号は、かねてから「早すぎる」いわれ、メトロノーム故障説など、いろいろその有効性を疑問視されていた。インマゼールはモダン楽器ではたしかに早すぎて演奏困難であることを認めつつ、ピリオド楽器を用いた室内楽的小編成オーケストラであるアニマ・エテルナであればそれは可能として、実際に演奏でそれをきちんと証明している。不自然さはどこにも感じられない。

ほかにも、この全集にはさまざまな研究の成果が反映されているのだと思うが、残念ながらぼくにはそれをきちんと受けとめられるだけの素養がない。ただ、ひとりの単純な聴衆として聴くと、明朗快活で躍動的、軽すぎず重すぎず、その気になれば気軽に聴くこともできるし、それでいて充実した密度感もある。ブックレットの邦訳の言葉を借りれば、この演奏にはたしかに「ベートーヴェンの厳粛さ、ドラマ性、陽気さ、ちゃめっ気がフルに現れ」ていると思う。

余談だが、この全集には序曲などいくつかの小品がおさめられている。最近ではコスト優先のせいか交響曲全集も最小構成ということが多く、その意味でもめずらしい。そんな小品群のなかで、祝祭劇『アテネの廃墟』作品113、だれもが知っている「トルコ行進曲」が溌剌として魅力的だった。ピリオド楽器のすこし乾いた音が、楽隊風に聴こえて、これぞアニマ・エテルナの真骨頂、とか言ったらちょっと顰蹙なのかもしれないけれど。

 

 

Annotations :
ベートーヴェン/交響曲全集 : Beethoven: Symphonies/Ouvertures
Jos van Immerseel, Conductor
ANIMA ETERNA
Zig-zag Territoires: ZZT080402.6
Link : HMVジャパン

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