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2007年8月12日 (日)

CHORD の DAC64 Mk2

DAC64以前ほどではなくなったにせよ、いまでもあちらこちらで話題になる英国 CHORD Electronics の DAC64。 これは "D/Aコンバータ" という機械で、単に "DAC" と表記する場合も多い。CDトランスポートやPCなどから出力されたデジタルデータを、通常のアンプなどに入力できるアナログ信号に変換する役割を果たす。


2004年になってすぐのころ、たまたま機会があって入手することかできた。この DAC64 (正確には DAC64 Mk2) を購入して、ぼくははじめてハイエンドオーディオの世界をかいま見たような気がした。さらに、これがきっかけとなって、機器構成も大きく変わっていった。具体的には、CDプレーヤー (当時はTEACのVRDS機を使っていた) を手放し、PCとRMEのオー ディオカード組み合わせてプレーヤーにするようになった。ほんとうに気はたしかか?――と当時自分でも思ったが、DAC64を通すことで、たとえノイズの温床といわれるPCであっても、専用のCDプレーヤーと比べても遜色ない、あるいは凌駕する環境が得られる、と確信したのだった。

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"ハイエンドオーディオ" という言葉は、いまはほんとうに手の届かないような ハイエンドの世界にしか使えなくなってきた。ぼくが使っている機器は、たぶん世間では "ミドルレンジ" と呼ばれている。とても正気の世界とも思えないが、それはそれとして、だから簡単には"ハイエンド" という言葉は使えなくなってきた。それでも、このDAC64には、"ハイエンド" の世界に触れた、と思った。

DAC64LEDここでいうハイエンドというのは、価格的にはその名のとおりまあ高くてもいいのだが、ただ高いというだけではなくて、ある人なり会社なりが、信念と情熱と、さらにある種の趣味性をもって作りあげた、ほかとの比較が意味を持たないような独自の製品、というような意味なのだと思っている。DAC64で鳴らす音楽からは、さりげなく、でもしっかりとそういった個性が感じられた――音の力感、躍動感、密度、それから "気品"と歯の浮くような表現をしたくなるような艶やかさ。あるいは色気。

DAC64 の外観は、見てのとおり特徴的だ。持ってみるとずっしりと重い。アルミブロックからの削り出しによるケースには、まるく窓があいていて、青いLEDに照らされた基板を見ることができる。べつに自慢するような回路基板ということでもないのだろうが、Xilinx の DSP がならんでいるのを見ていると、いかにも「仕事ができる」機械に見えてくる。

オーディオ機器の本来の仕事である "音" と、そして装置・機械としての造形。このふたつの要素が組み合わさって、DAC64を魅力的なものにしている。

§

考えてみれば、いまぼくの持っているオーディオ機器のなかでは、このDAC64 Mk2 がいちばんの古株になってしまった。ついこのあいだまでは、スピーカーのALR/Jordan Note 7が君臨していたのだけれど、これも先日報告したとおり、B&Wの802Dに変わった。

でもじつのところ、DAC64には完全に満足しているわけではない。いまは予定はないが、過去、何度かべつの機械に買い換えようと計画したことがある。それはおもに、DAC64の使い勝手に不満があってのことだ。

たとえば、デジタル入力は3種類あるにもかかわらず、それを切り替えるには背面の小さなトグルスイッチを切り替えなくてはならない。背面には、無骨さの演出のためか、いっさいの説明が印刷されておらず、たまに切り替えようにもどれがどれだったか、いつもわからなくなる。

DAC64U12まあ、それは些細といえば些細な問題だ。愛と記憶力があれば乗り越えられる。ほんとうにまいったのは、ときどきロックがはずれてしまうという現象だった。 "ロックがはずれる" というのは、外部から送られてくるデジタルデータに対して、ノイズなどが原因で一時的にタイミングや信号の種類がわからなくなってしまう現象のことだ。

ロックがはずれて音が途切れるだけであればまだしも、困ったことに、DAC64 自身がロックがはずれていることに気がつかず、ゴミとなったデータをそのまま再生してしまう。デジタルのゴミデータは大変だ。これがアナログであればプチとかプツ、あるいはザーというノイズですむのだろうが、デジタルのゴミは情け容赦がない。どう形容すれば伝わるだろう――突如数秒間、大音響で連続性のないパルス音となって鳴り響くのである。これにはほんとうにまいった。怖くて大きな音量で音楽が聴けなくなってしまった。

 

いまはふたつの対策をして、この問題は回避できている。ふたつ、というのは、まずロックがはずれたときに、あの大音響デジタルノイズを出さないようにすること、もうひとつはロックをはずすようなノイズ混入を防ぐこと、である。

ケーブルを変えたりいろいろと試行錯誤をしてもいっこうに改善せず、思いきって輸入代理店であるタイムロードに相談した。このタイムロードの対応がよかった。この問題の背景をいろいろと説明をしてくれ、何回ものメールのやりとりにもきちんと応じてくれた。説明はいくぶん言い訳感が否めないでもなかったけれど、これだけ丁寧に応対してもらえると、ユーザとしてはそれだけで満足感が得られようというものだ。

結局、DAC64をタイムロードに返送してファームウェアの更新をしてもらった。その際に思いがけないアクシデントがあった――この話には関係ないので割愛する――このときにもタイムロードの対応は申し分なかった。

帰ってきたDAC64 Mk2からは、いちどもあの破壊的デジタルノイズは聞いていない。すでに何年かが経過したいまも、なんだか100%信用する気にはなれないけれど、ノイズは出ていない。

BNC3 自己流ながらノイズ混入を防ぐ対策も行い、意図しない状況でロックがはずれるということもなくなった。これは、まずシールドのしっかりしたデジタルケーブルを使うこと。それから――これが大切なのだが――2つあるBNC端子のうちひとつだけを使用している場合、空いているほうのBNC端子をしっかりとシールドすることである。シールドするのは簡単だ。数百円のBNC-RCA変換プラグがあればいい。最初に試作したのは、右の図のようなもの。RCA側にアルミホイルを巻いて、その上からRCAジャック用のコネクタカバーをかぶせて固定するだけ。見た目以外は何の問題もない。

これだけでノイズ混入は激減する。逆にここが空いていると、部屋の静電気などが原因でノイズが入り込み、DAC64はDual 信号とかんちがいをして、ロックをはずしてしまう。

ただし、ソース機器のサンプリングレートを切り替えるなど、なにか明示的な操作をしてロックがはずれた場合のポップアップノイズはいまでも出る。つい先日、機会があったので、新しいファームウェアでこれを解消できないかとタイムロードに聞いてみたところ、それはやっぱり無理、とのことだった。 そもそもアンプまで含めてボリュームも絞らず通電した状態でサンプリングレートを切り替えるなんて、それは無謀ですと逆に窘められてしまった。まあ、当然といえば当然なのだろう。

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DAC64U22 とても扱いにくそうなDAC64だが、それはそれで愛着心を沸かせてくれるというのも事実である。"ハイエンド"機器なんて、そういうものだと思えばいい。いま使っているGOLDMUNDのパワーアンプにいたっては、取説といっしょに、アンプの発振に関する注意事項の書かれた紙が入っている。RCAケーブルの接続、シールドの方式によっては発振するというものだ。ふつう、コンシューマ向けのオーディオ製品にそんな注意が必要などということは、とても考えられない。強いモチベーションをもってこの機器をあつかうひとにしか通じないエクスキューズであり、それはたとえば友人が一時期乗っていた、イタリアの "ハイエンド" の自動車にも通じる世界観だ。DAC64の特質も、そうした例のひとつであって、タイムロードの表現を借りれば「より良い性能を出すに必要な制約でありシビアさである」と理解して、それも楽しみのうちのひとつと考えるのが健全だろう、と思っている。

DAC64とPCのあいだには、いまはTEAC/ESOTERICのG-25Uを接続している。数ヶ月前に導入したものの、その効果は期待したほどではなかった。2chではG-25Uによる176.4kHz デュアル接続が最高と言うひともいるようだが、両機器間でのデュアル接続は互換性上の問題が発生しやすく、初期ロックにしくじるケースも多い(ロックに成功したあとは快調である)。一時期それで使っていたけれど、使い勝手という面では最悪であり、いまはCARDASのLightning 15を介してシングル接続で使用している。

電源ケーブル交換による変化は、ぼくのところではほとんど見られなかった。これはDAC64がスイッチング電源を使用しているためなのかもしれない。そもそも電源系の世界はよくわからないことが多いが。

 

Annotations :
CHORD Electronics
公式サイト: http://www.chordelectronics.co.uk/

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