B&W 802D の近況報告と、部屋の影響
B&Wの 802D を導入して、2ヵ月半がすぎた。週末専門リスナーとはいえ、スピーカー本体の鳴らしこみもそろそろひと段落と考えるべきかもしれないが、たぶんまだまだ音も変わっていくのだろう。低域はよりスムーズに出るようになり、中高域についても、これまで感じられなかった気配、ニュアンスが聴きとれるようになってきた。あれこれ聴くのが、とても楽しい。
スピーカー自身の変化もさることながら、その環境もなかなか落ち着かない (そう簡単に落ち着いてしまっては楽しみがなくなって困るのだが)。先日からご報告しているとおり、脚部をスパイクに変えたり、ケーブルを変えたりしているが、いちばん落ち着かないのはその設置位置だ。先日も 802D を数cmほどまえに引き出して、さらに内振りの角度を、リスニングポイントから見て正面よりも気持ちだけ外側になるように設置してみた。
それまではすこし内振りを強くして、スピーカー正面からの線がリスニングポイントの手前で交差するようにしていた。これだと (あたりまえだが) センターの定位はよくなる一方、左右の広がり感は乏しくなる。 B&W 802Dは水平方向にわりと素直に音の広がるスピーカーなので、広がりが乏しくなるということもそんなにないはずなのだが、視覚からくる印象の影響なのか、部屋の影響なのか、そのように感じて、こんどは開くようにしてみたのだ。これでしばらく使ってみることにしよう。
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802D を置いている6畳の部屋は、格好よくいえば書斎みたいなものだ。たくさんの本やCDなどを収納するために、大きな書棚をふたつ入れている。写真で見てもわかるように、802D はうしろがすこしその書棚にかぶさるように設置してある。どう見ても音にいいわけはないのだけれど、これは住宅事情の関係から当分解消できそうにない。
そういうせまい部屋には不釣合いに大きなスピーカーを押し込んでいるので、心配していたとおり音が抜け切れず、飽和気味になりがちだ。書棚が音の拡散・吸収の役割を果たし、床面もフローリングではなく絨毯引きになっているので、いわゆる "鳴き竜" 現象でびんびん響くということはないのだが、低域の強いソースを大きめの音量でかけてみると、机などからは振動が感じられる。
とくにいまいちばん怪しいと思っているのは、スピーカーに相対する壁面、つまりぼくの背中側にあるクローゼットの扉だ。これは天井までの高さがある。いかにもたわんで振動しそうだし、大きな音で鳴らしているときにそっと触れてみると、かすかにビリつきを感じる。生活や外観上の限界もあるので、あまりむちゃくちゃなことはできないし、やりすぎて無味乾燥(デッド)になってもこまるのだが、そろそろこのクローゼットの扉についても、なにか対策を考えようと思っている。
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興味のないひとから見れば、なんと細かいというか、苦労症というか、神経質というか、くだらないというか、そういう世界に見えるのだと思うが、それで音が変わることに気がついてしまい、あれこれ対策することに楽しさを見つけてしまったのが運のつき、ということなのだろう。
それにしても、オーディオの調整はプラシーボ(気のせい)との戦いだ。それまでの苦労や投資に対する暗黙の期待感や、視覚的な印象の影響から抜けきれないことはよくある。さらには時間帯や日によっても音がちがう。これは供給されている電源のノイズに差があるとか、気候や湿度、はたまた気分の影響だといわれているものの、本当のところはよくわからない。そういう精神面(?) も含めた無数のパラメータがあるなかで、あまり突きつめてやりつづけているうちに、知らず知らず大改悪になっていた、なんていう話もありがちだ。
ただ、いっぽうで、たとえば機器の足許の整備やケーブルの交換は、ときどき唖然とするほど大きく改善することがあるのもたしかだ。人間の耳は、測定機器よりもはるかに敏感に音の変化を聞きわける。それはむかし、ある仕事をしていたときに痛切に感じた。そしてスピーカーから聞こえてくる音が、部屋の状況をふくめ、多かれ少なかれ周囲や振動の影響を受けているのもまちがいない。なにかを変えれば、音も変わる。むずかしいのは、できるだけ冷静に、なるべくプラシーボを排除しつつ、その変化を聞きわけるということだ。
そのためには、シンプルにとどめつつ、即断せずゆっくりと判断していくのがいいのだろう。最近になって、ようやく、そういう心構えができるようになってきた気がする(笑)。
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コメント
響華間さん、こんばんわ。
音像は私も苦労しています。主に内振りの角度でいろいろと調整中です。
GOLDMUNDは低域が膨らまず、そのかわり芯の強さを感じさせます。これが「アナログ・ジャズ・モノラル」をどのように響かせるのか興味深いところですが、やはりMcIntoshやラックスが王道なのでは、とも思います。
店とかショウの会場での試聴は、条件が自宅とは異なるので絶対的にはなかなか捉えづらいですね。聴き比べという相対的な形であればわりとわかりやすいので、聴き比べをさせてくれる店を見つけるといいかもしれません。
投稿: Tiki | 2007年10月 8日 (月) 23時00分
Tikiさん、こんばんは。
オーディオで重さは一つの値打ち?だと思うのですが、こういう時には、困ってしまいますね。でも、部屋のせいもあると思いますが、どうも音像がぼけてしまいますので、改善を期待して交換してみたいと思います。
なるほど、貴重なご意見ですね。やはり、B&Wのスピーカは「アンプの鏡」で素直に反射するのですね。これが、最大の美点だと使ってみて思いました。私、メインのソースが「アナログ・ジャズ・モノラル」というアクの強いものですので、逆にGoldmund等のあっさり系を持って来た方が良いのかもしれませんね。しかし、高いからなぁ…。しばらく悶絶の日々は、続きそうです。
投稿: 響華間 | 2007年10月 8日 (月) 00時52分
響華間さん、コメントありがとうございます。
802Dの重量は、人(体力?)によってだいぶ捕らえ方がちがうようで、余裕だという方もおられれば、私のようにギリギリ(^^;という人もいますね。私も装着前にいろいろ調べたのですが、これという情報がなかなかなく、これを機にちょっと詳しくまとめてみました。参考にしていただけたようでうれしいかぎりです。
私はいまはGOLDMUNDで、どちらかと言えばあっさり系なのですが、以前ラックスのアンプを使っていたことがあり、802Dとラックスの"コク"は合うのではないかと密かに思っています。
悩んでいるあいだが一番楽しいとき、と言いますが、それなりの出費を伴うので簡単に買い換えるわけにもいかず、本当に悩ましいですね。でもやっぱり、ちょっと楽しそうな、というか、うらやましい気も....(^^)
投稿: Tiki | 2007年10月 7日 (日) 15時30分
こんにちは。始めまして。
802Dのスパイクフット交換で検索をかけて辿り着きました。大変、参考になります。ありがとうございます。
さて、いざ作業をするとなると、状況はTikiさんと同じで誰に手伝ってもらうかが問題です。仕事で使ってるバイト君を、自腹で雇うか?など考えましたが、無難に弟をレコードか何かで釣って、手伝いさせようと考えています。
今、アンプ(mcintosh MA6900)の交換を考えていて、機種検討を兼ね、東京インターナショナルオーディオショウを見てきました。ラックスマンのブースで802DをA級プリメインで鳴らしているのが良かったのです。どうせならセパレートの方でと悩みまくりです…。
投稿: 響華間 | 2007年10月 7日 (日) 12時41分