グールドのJ.S.バッハ、ゴールドベルグ変奏曲
昨夜、グールドのゴールドベルグ変奏曲の "紙ジャケ" CDが2枚、HMVから届いた。最近流行っている "紙ジャケもの" はじつは初めて買ったのだが、その意外な高級感にはすこし驚いた。団塊世代の懐古趣味に訴えかけているようで、なんとなく胡散臭いものを感じていたけれど、これはこれでレギュラーな形態としてもいいのではないかと思う。
それはそれとして、なんでいまさらグールドのゴールドベルグ変奏曲なのかと言うと、スピーカーがB&W 802Dに変わってすぐ、いちばん驚いたのが、1981年版のグールドのゴールドベルグ変奏曲をかけたときだったのだ(写真で言うと、まんなかの下のディスク)。
このCDは、だいたい20年前、それまでのLP時代から脱して初めてCDプレーヤーを買った際に、同時に購入したものだ。それから20年間、つかず離れずずっと聴いてきた。多少感傷的に言えば、これを聴くことでいちばん自分をとりもどせるような、そんな演奏だ。仕事上で、無理な挑戦やトラブルに見舞われてストレスのかたまりになっているとき、この演奏を聴けば、すっと自分がもどってくる。それは、バッハの変奏曲がどうだとか、グールドの活力に満ちた演奏がどうだということよりも、ただずっと付きあっているお馴染みさんだからなのだとは思う。
黎明期に出たばかりのCDだから、マスタリングもパッケージそのものも古いといえば古いのだが、ぼくはとても音のいいCDだと思っていた。歴代のアンプ、スピーカーの試聴時には、多少ゲンをかつぐ意味もあったけど、かならずこのCDも持って行っていた。
ところが、届いたばかりの802Dで聴いたとき、そのノイズ感に愕然としたのだ。
とっさに脳裏をかすめたのは、このCDを買ったのがもう20年もまえであること、最近、リマスタリングが話題になっていることだった。さっそくHMVを徘徊してみると、有名な録音だけあって、国内外さまざまなバージョンが出てきた。そのなかで、この発売されたばかりのDSDリマスタリングによる紙ジャケバージョンを見つけ、その場で注文した。それが昨日届いたのだ。
結果として、その音の差異はというと、ノイズ感は減少して、さらに音の角がより円やかになっていた。20年前の盤は、高域を強調したような、CD黎明期の特徴とよく言われたすこしギラつき感のある音だ。そのとき同時に買ったベームのブラームスは、まさにそれが強調されたマスタリングで、あまりにきつい音なのでいまはもうまったく聴いていない。ただこのグールドの演奏は、ピアノ独奏で持続音が少ないことから、たぶんいままではあまり意識することがなかったのだと思う。逆にエッジが立ち気味の部分を「良い音」と感じていたのだろう。
もうひとつ、良いことがあった。20年前の盤は、1曲だからということで、トラック1つの構成になっており、各変奏はインディクスで指定されている。当時のCD制作時の試行錯誤感がすこしわかるようだ。いまはもうインディクスは特別なものになってしまった。新しいDSDリマスタ盤は、各変奏ごとにトラックが分かれている。ちょっと調べたいときに頭出しするには、あたりまえのことだがだいぶ便利になった。
写真からわかるように、このとき、1955年版のグールドのゴールドベルグ変奏曲も同時に購入した。恥ずかしながら、この1955年版はこれまでちゃんと聴いたことがない。通勤用のiPodに入れて、これから聴きこんでいこうと思う。とても楽しみだ。最近はちゃんと聴くならiPodということになってしまっている。いったい何のためのオーディオなんだか。
英語読みで "ゴールドベルグ"、独語読みで "ゴルトベルク"。ふだんぼくはゴルトベルクと言っているような気がしたが、世間では英語読みが一般的のようなので、ここではゴールドベルグと表記した。
HMVでの1981年版の紙ジャケ仕様は残念ながら完売のようなので、以下は通常盤へのリンクです。
Link : HMVジャパン / 1981年盤
Link : HMVジャパン / 1955年盤
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コメント
Buxさん、こんばんわ。
音の話ばっかりで肝心の音楽のことはなにも書いてなかったですね。
20年ぶりに(20年だよ!)買いなおして、ちょっと感慨深かったのです。
今後ともよろしく。
投稿: Tiki | 2007年7月12日 (木) 22時37分
お初の書き込みです。今後ともよろしく。
グールドのゴールドベルグ変奏曲、最高ですよね。子供みたいな引き様が特に気に入っています。ふふふ。
投稿: Bux | 2007年7月12日 (木) 21時44分